• 2018.07.14 Sat
  • 芸術祭のみどころ・歩き方
  • 第4回かもめ企画-みずぎわだつ-エンゲキプロジェクト『セチュアンの善人』

インタビュー|新潟の「場」が持つ力をつたえたい

水と土の芸術祭に市民プロジェクトが組み込まれた2012年に出演者公募の演劇作品上映でエントリーし、その時メイン会場内の「かもめシアター」で上演。以来「かもめ企画」と名付け、常設の劇団ではなくプロジェクト型の活動を開始。過去3回の市民プロジェクト参加では、現在、青森県に拠点を置く劇団A.C.O.A.鈴木史朗氏を演出家に迎えて関屋浜の海の家で合宿を重ねて芝居を作り上げてきた。プロジェクト代表の小野真貴子さんは、20歳の大学生だった2012年に応募して主役をつとめ、以来活動を継続している。

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「文化芸術は東京にしかない」と思っていたのは間違いでした

演劇経験がほとんどないまま大学生だった2012年に主役を演じ、今年はプロデューサー的な立場に立つ小野さんは、これまでの活動を通して起こった自身の変化を次のように語った。

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「芸術文化は東京とか、大都市にしかないと思っていましたが、堀川久子さん(水と土の芸術祭2012ディレクター)や役者の小林へろさんはじめ、たくさんの人と出会った。もちろん今も演劇やパフォーマンスを観るために東京へは行きますが、東京にしかないと思っていたのは間違いでした。芸術文化は新潟にもある」

そして、上演準備のために普段足を運ばない場所を訪ね歩くうち「地に足をつけて、新潟が好きになった」と言う。

新潟に「市民プロジェクト」がある意義

「もちろん、お金が助成されるというのはすごく大きいです」と小野さんは語気を強めて言う。稽古場を借りるにも、公演会場を借りるにも、ポスターを作るにもお金はかかる。かもめ企画は毎回鈴木史朗氏を演出に招聘し、外からの視点を取り入れているが、助成なしでこうした形の公演をするのは、よほどの集客力がない限り不可能に近い。

同時に小野さんは「水と土の芸術祭というおまつりの中でやれる」ことも大きな意義だと言う。演劇に興味があっても、メンバーの人間関係ができあがっている劇団に参加するのは敷居が高い。日頃接点がないと、新潟に劇団があり公演を行っていることも分からない。水と土の芸術祭という大きな傘の下で公演することによって、これまで接点を持てなかった人同士がつながり、新潟で演劇の裾野を広げることができる。かもめ企画は固定した劇団ではなく、プロジェクトごとにメンバーを公募して作品を作り上げており、小野さん自身が「おまつりの中」で演劇と出会った一人でもある。

「おまつり(=水と土の芸術祭)の中で主体的に活動し、楽しんだことで、それらと地続きのものとして身の回りの風景を再発見できたように感じます。それまで未知のもの、近寄りがたいものとしてあった自分を取り巻くいろんなものを、価値があるのかないのかわからないままで肯定的に楽しんで過ごせるようになったと思う。新潟にこんなおまつり、水と土の芸術祭と市民プロジェクトがあることは、とても豊かなことだと思います」と話す。

新潟ならではの浜茶屋の、季節外れの風景

かもめ企画はこれまで同様、海水浴シーズンが終わった直後から関屋浜の浜茶屋を借りて合宿。共同生活を送りながら芝居を作り上げ、公演もその場所で行う。およそ一ヶ月の合宿期間は、芝居を作り上げるだけでなく景色やにおい、音、風、建物など「場の持つ力を咀嚼するため」の時間だという。

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「鈴木史朗さんは『場』をとても大事にして生かす演出をされます。2015は浜茶屋の1階と2階で同時進行する芝居を作りました。今年は秋の海にフォーカスする予定です」と小野さん。

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「場」に抱く印象は人それぞれに違う。それぞれの記憶、知識や経験によって、また季節や天候、連れだった人によっても異なり、それらが積み重なって不思議な質量のようなものが生まれる。かもめ企画は、新潟市民にとって最も親しみがあり、かつありふれた景色でもある浜辺と、演劇を介して、それぞれに「出会い直し」をしてもらうことを目指している。

「アートはみなそうした効果があると思いますが、場の持つ力を最も発揮させることができる装置として、演劇はすぐれていると思う」と小野さん。

市民プロジェクトを通して場や人と出会い、イメージが広がることで心を豊かにしてきたように、観た人に新潟の風景をこれまでとは違った視点で捉え直し、イメージを豊かにしてほしいと小野さんは願っている。

公演「セチュアンの善人」

演出 鈴木史朗

上演 10月5日〜7日で3公演の予定

会場 関屋浜

 

ライター:橋本 啓子

第4回かもめ企画-みずぎわだつ-エンゲキプロジェクト『セチュアンの善人』
第4回かもめ企画-みずぎわだつ-エンゲキプロジェクト『セチュアンの善人』
新潟市民の参加者と全国各地の俳優、ミュージシャンと共に海の家での滞在、舞台の制作を行い、公演『セチュアンの善人』を海の家にて上演します。

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