• 2018.09.24 Mon
  • 芸術祭のみどころ・歩き方
  • 浦島 茂世

東京から日帰りで楽しむ、新潟の街と歴史と水と土の芸術祭<前編>

夏の暑い日、ちょうどぽっかりと一日自由に時間が使えることになった。ならばと思い立って行ってみたのは、ただいま新潟市全域で開催中の水と土の芸術祭。東京からは7:48のMaxときに乗れば、10:00ちょっと前に新潟駅に到着できる。

そしてラッキーなことに、新潟の友人、野内隆裕さんもたまたまその日があいていた。いい感じのカフェを知りたくて連絡を取ってみただけなのに、芸術祭のおすすめ作品や野内さんが愛してやまない新潟おすすめ地形をあわせて案内してくれるという。これは幸先がよい!

1_電車

早起きして新潟へ!見渡す限り田園風景

 

野内さんは新潟の街が好きすぎて、古町にある小路に自分で勝手にインディーズ案内看板を作って貼って回ったり(クオリティが高すぎて後に新潟市の公式看板になった)、新潟のシンボルの一つである日和山にいい感じのカフェ兼私設資料館を作ったりしているバイタリティあふれる人。これまでの水と土の芸術祭にも、その新潟愛をたびたび提供してきたという。

今回の芸術祭ではタイのアーティスト、ナウィン・ラワンチャイクンのリサーチに同行。彼は新潟の歴史を紐解き、地元の人々にインタビューを重ね、四季を織り交ぜた絵画と動画作品が完成した。その中には野内さんの姿も描かれている。

2_四季の便り万代島エリアのメイン会場「万代島多目的広場」に展示されているナウィン・ラワンチャイクン≪四季の便り≫(2018)

3_四季の便りヨリナウィン・ラワンチャイクン≪四季の便り≫(2018)に描かれている野内さん(港稲荷神社のシンボルのひとつ「笑うキツネ」の右隣)

 

そんな野内さんのナビゲートで芸術祭を巡ってみる。野内さんはわざわざオリジナルの旅のしおりを作ってくれていた。

4_map野内さんによるオリジナル旅のしおり

 

しおりには水と土の芸術祭の会場とともに、新潟の町の高低差が描かれている。新潟の町は信濃川と阿賀野川に挟まれている。このふたつの川が砂を下流に運び、日本海に沿って砂丘の列を作った。地図を見てみると、町の中にうっすらと緑色の「しましま」が浮かんでいるのがわかる。これが砂丘だ

砂丘の周辺には水がたまり低湿地帯をつくっている。なるほど、本当に新潟は、水と土、そして川と砂の街なんだなあ。

そんな街の成り立ちを知ってから新潟を歩くと見え方がガラリとかわってくる。普通の住宅地でも、新潟が砂丘であることがすぐにわかるのだ。

5_砂丘砂丘の上に立つ住宅地。平地からいきなりググっと地面が上がっている

6_新潟の街2

パリのモンマルトル風な新潟の砂丘の上

 

こんな歴史を芸術家たちはしっかりと踏まえ、新潟の地に作品を残している。さっそく訪れたのは、旧栗ノ木排水機場。この排水機場は昭和23年から昭和39年の16年間、湿地だった周辺一帯の水を汲み上げ湿地を田園地帯に生まれ変わらせた、新潟にとってとても大切な場所。

青木野枝や磯辺行久の作品を通じて、かつてこの一帯は水に満ち、また別の風景があったことに思いをはせる。特に、青木野枝《もどる水—2018》は、裏側に回って、手動の閘門側から見てみると、かつては水があったことがより一層感じられると感じた。大雨の日とか、ここで水はたぷたぷとしていたのではないかしら。

7_もどる水青木野枝《もどる水—2018》

 

8_かつて栗の木磯辺行久《栗ノ木排水機場は近代農業土木の原点となった。》

 

栗ノ木排水機場から南東に進んでいくと上り坂が現れる、石山砂丘だ。ちょっと遠回りだけれども、この尾根を縦断してから続いての会場、天寿園へ向かってみる。わずかな坂道でも、この山や坂は、川が運んできた砂でできたものだ知っておくと、歩いているだけで楽しくなってくるから不思議だ。

9_村野藤吾蓮の花をイメージした瞑想館。館内には折本立身の《Step in》シリーズを展示

 

ここで特に印象に残ったのは潘逸舟の作品群。広い空間を使ったインスタレーション《循環》や、映像作品《波を掃除する人》は、波というモチーフを通じて人間と自然との関係、そして人間と「自分の力では立ち向かえない大きな力」について考えさせてくれる、と感じた。

10_循環潘逸舟《循環》

11_波を掃除する人潘逸舟《波を掃除する人》

また、同会場にあった山内光枝の《海胎(うなばら)》は、残念なことに全部は見切れなかったものの、その映像の力強さにグイグイと引き込まれた。この作品を最後まで見られなかったことが、この日帰り旅の唯一の後悔……。

そして、親松排水機場(栗ノ木排水機場の後継)、関屋分水を経由して新潟砂丘へ。新潟は土木好きの人にも楽しいところだ。

12_関屋分水信濃川の分水路、関屋分水。この分水のおかげで新潟市の洪水は激減した

 

(後篇へ続く)

 

浦島 茂世
浦島 茂世
美術館訪問が日課のフリーライター。時間を見つけては美術館やギャラリーへ足を運び、内外の旅行先でも美術館を訪ね歩く。Webや雑誌など、幅広いメディアで活躍中。

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