• 2018.08.16 Thu
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地域拠点プロジェクト 天昌堂プロジェクト2018

天昌堂プロジェクトは、水と土の芸術祭の中でも、「アートを活用して地域の課題に取り組む」ことを目的とした地域拠点プロジェクトのひとつ。南区白根商店街にあった元洋品店(天昌堂)を舞台に2016年から活動しています。


「健康」なまちづくりを目的に、現代アートと建築のコラボでつくられたコミュニティスペースで、現在、多世代向け遊具を使い、心身共に健康を促す実験的なプログラムを実施しています。私は、プロジェクトの監修・アーティストとして、2016年から関わっていますが、今回は、先日行ったワークショップの報告も兼ねて、プロジェクトについて少しお話しします。


 写真1_天昌堂正面_01


(写真1:天昌堂正面)



天昌堂から見えてきた南区


天昌堂は、昭和初期から地域住民を雇用し、地元白根中学・高校の学生服の販売など、住民の生活に寄り添う交流の場でもありました。特に今の高齢者にとっては、青春時代を過ごした思い出深い場所。当時のファッションリーダーとして、この地域の文化をリードする中心的存在だったそうです。時代の流れと共に長年続いたこの洋品店も6年前に閉店となり空き家化。高齢化・後継者不足によるシャッター街化が進み、街の衰退化は深刻な問題でもあり、核家族・若年層のコミュニティ活動への参画や、地域全体の健全化が今、大きな課題となっています。


また、白根地区は高齢者のみの世帯数が県内平均よりも多いことや、移動手段の不足による独居化、新潟特有の長期的な冬などを理由に、南区が、新潟市の中で最も不健康という調査結果があります。そこで、地域コミュニティの希薄化や、社会のストレス化が広がる現代社会に置いて、個人の健康が、私たちが生活する環境、経済、教育など含む社会的要因が関係することを示す「健康の社会的決定要因」の観点を具体的に取り入れながら、アートの発想を生かした場作り・まちづくり計画が必要だと考えました。


 写真2_WS様子_遊び喋る


遊びを考えるワークショップの様子。滑り台がゲームの装置に。自由に遊び方を考えています。(写真2:天昌堂内部)



アートを活用した「健康」なまちへ


そこで、役場、住民、地域医療の専門家とも協働体制をつくり、医療業界の視点からの調査・分析、そして「代替医療」として現代アート・文化が果たせる効果をあらゆる角度から実験・実証しながら、コミュニティスペースを形成しています。


 写真3_フリースペース夜


2016年完成直後の様子。まだ内部には、当時、開講していたコミュニティの担い手を育てる学校の受講生と共に授業の一環として制作。(写真3:フリースペース)


現在は、天昌堂の一階部分を、4つの用途で運営しており、入ってすぐ右にはフリースペースと称した地域の町家建築のデザインを応用し、多目的に活用できる縁側がある木造建築。これはプロジェクトの初年度に9日間のワークショップを通じて作り上げられた空間です。


 写真4_サロン


定期的にサロンに来る方々が、コスチュームを来て遊んでいる様子。即興演劇が始まっていました。(写真4:サロン)


その奥には、「サロン」と呼び、普段は支えあいの仕組み・健康寿命延伸モデルの拠点新潟市地域包括ケア推進モデルハウス「地域の茶の間」として主に活用しています。


 写真5_アーカイブ


いっしょに活動する南区在住・建築家本間智美さんが、ゲストをガイド。(写真5:アーカイブ)


その隣には、天昌堂に残された広報物や商品など「記憶のオブジェ」を収蔵するアーカイブスペース。時間をかけて天昌堂を繰り返し掃除しながら発掘されたものばかり。洋品店の特徴とも言える様々な種類のハンガーを壁に陳列していたりしています。


 写真6_遊具_シャンデリア


シャンデリア輪投げ。ガラス越しからでも、輪投げ遊びの仕掛けがつくれます。(写真6:シャンデリアを活用した輪投げ)


そして、この3つの空間を埋めるかのように展開する遊具がある屋内公園は、2017年冬に、天昌堂で使われていたシャンデリアやショーケース、鉄のハンガー掛けなどの資材を活用し、使い手が使い方を発想する「遊び」を残した遊具が、30作品ほど制作され、今に至ります。



期間中の見どころ


7月末に、この遊具の使い方を考案するために、公衆衛生的なアプローチから高齢化社会を研究する新潟大学の菖蒲川由郷先生や、地域と協働した運動疫学を専門とする篠田邦彦先生を交え、住民の方々と共に、実際に遊具を使いながらアートと健康を意識した遊びのアイディアを出すワークショップを2日間実施しました。


 写真7_WS様子_遊び椅子_01


最初は、遊びについて話をしていましたが、椅子が回ることを利用して、腰を回す器具に早変わり。そのあとみんなでダンスをしました。(写真7:ワークショップの様子)


アートと健康、遊ぶ、遊戯など言葉の再定義など、様々な角度から利用者の思いとも照らし合わせ新たな遊びを再検証。結果、遊具を使ったダンスを編み出したり、身体を動かすアイディアから、体を動かすことのみならず、こどもが楽しそうに遊ぶ様子を遠くから観察することも、ただ滑り台の周りでおしゃべりも健康に繋がるなど、既存の考えを越えたアイディアがたくさん生まれました。これを元に、新たに天昌堂の活用方法や空間整備、必要に応じて遊びの参考として活用いただける遊び方レシピ制作を開始しています。


写真8_WS様子_ゆったり


公園などの公共施設は、年齢制限や多くの規制があることから、自由な発想で「遊ぶ」ことが難しくなっていると嘆く母。息子はいろんな遊びを発明してくれました。(写真8:ゆったり・遊びの発見がとまらない)

 

まだまだ未完成の場所ではありますが、トライアンドエラーを重ねながら、アート、そして「遊び」によって、心身の健康を育む仕掛けがあり、そして誰しもが持つ想像力・創造性を大切に、3つの間(時間、空間、仲間)をたいせつにできる場所を目指して、今後も活動していきたいと思っています。


みなさんだったら、どんな遊び方を考えますか?


是非とも、天昌堂に遊びにいらしてください。



おまけ:南区ってどんなところ?


 交通手段が限られているため、新潟駅近郊からはバスか車ですが、南区は、新潟市8行政区の中でももっとも人口が少ない地域で、稲作中心の農業、また果樹産業も盛んな地区です。そして、天昌堂がある白根地区は、全国有数の仏壇の産地でも有名であったり、また、白根商店街では、300年以上続く「白根大凧合戦」の会場の河川から一番近いので、合戦の最中は、通常ほとんど歩行者や交通量もない商店街も、出店や地域の方々で賑わいをみせます。他、重要文化財となる「旧笹川家住宅(笹川邸)」ですが、こちらも一軒の価値あり。


最後の最後に、白根商店街には、私が必ず伺うオススメのお店を紹介します。


 白根の青年会議所が運営するガンギ屋。駄菓子があり、こどもや親子でいつも賑わっています。そして、やまとやパーラーの白アイス。体も心もひんやりと。とても素朴な味わいなので、是非とも味わってみてください。夜には、私がこよなく愛する「にし山」。天昌堂から歩いて数分。お通しがとても豪華。それだけでビール2杯くらいいけます。そして「金寿し」も大好きです。

菊池 宏子
菊池 宏子
東京都生まれ。ボストン大学芸術学部彫刻科卒業、米国タフツ大学大学院博士前期課程修了。米国在住20年を経て、2011年、東日本大震災を機に東京に戻り現在に至る。MITリストビジュアルアーツセンター、ボストン美術館、あいちトリエンナーレ2013、森美術館などでコミュニティ・エンゲージメント戦略・開発に従事。また、「リライトプロジェクト」(東京、2015〜2017年)、「天昌堂プロジェクト」(新潟、2016年〜 )、「苦瓜推進協議会:The National Bitter Melon Council 」(アメリカ、2004年〜)、「寶藏巖農園肖像画計画」(台湾、2003~2004年)など、アート・文化の役割・機能を生かしたコミュニティ開発、地域再生事業に多数携さわる。その他武蔵野美術大学、立教大学兼任講師なども務めている。 photo : Ryuichi Maruo

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